内閣の独裁認める緊急事態条項

滋賀県議会 促進求める意見書を採択

社会新報 9月14日号より転載

 

滋賀県議会に自民党県議団などが提出した「緊急事態条項の創設に向けた国会審議の促進を求める意見書」は、県民の反対の声を無視して8月12日、採択された。改憲勢力が国会で3分の2を確保したなか、緊急事態条項を憲法に盛り込ませる動きが地方から強まる恐れがある。

「緊急事態条項」とは、戦争、大災害などの場合に、国会の議決なしに内閣が法律と同じ効力を持つ政令を出す仕組みであり、現憲法にはない。内閣はあいまいかつ緩やかな条件・手続きの下で緊急事態を宣言でき、緊急事態宣言中は△国会審議なしで法律の変更、制定ができ、△予算の裏付けなしに財政支出が可能、△地方自治体に指示ができ、△基本的人権の保障はほぼ解除されるというもの。

かつてドイツのワイマール憲法にはこの条項があり、ナチスはこれを根拠に「全権委任法」を制定して、独裁体制を構築し世界大戦への道を突き進んだことは有名だ。

憲法と民主主義を封殺しかねないこのような仕組みを、「コロナや風水害への対処のため」と称して導入しようとするものだ。

こうしたとんでもない条項を求める意見書が「論議を求めるだけ」として、県議会に提出された。滋賀県の「9条改憲NO!市民アクション」などの諸団体は県議会各会派への要請、申し入れを繰り返したが、この日、採決に付された。賛成は自民、公明、国民などの27人、反対は立憲、共産などの15人であった。

県庁前の集会で、危険性をきびしく指摘する小坂代表(左)

県庁前の集会で、危険性をきびしく指摘する小坂代表(左)

市民団体は朝から県庁前で抗議集会を開き、反対の声を挙げ続けた。社民党県連合の小坂淑子代表は、「今必要なのは具体的なコロナ対策や水害対策だ。緊急事態条項がなくてもやれることだ」ときびしく自民党などの動きを糾弾した。この意見書は自民党本部が地方議会での採択を進めるように通達しているもので、8月初めに愛媛、徳島県議会で採択されるなど、10府県議会で採択されたという。

また、滋賀県議会は昨年2月、日本軍「慰安婦」がなかったことにする意見書を採択し、その反動ぶりが非難を浴びた。

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