高市内閣の発足 自・維連立悪政に対決

社民党全国連合より【談話】

第219臨時国会(10月21日召集)の冒頭に行われた首班指名で、高市早苗自民党総裁が内閣総理大臣に指名され、高市内閣が発足した。これまで自民党と政権を共にしてきた公明党が離脱する一方、閣外協力という形ながら、日本維新の会が与党として新たに加わった。

高市首相は、閣僚時代を含め8月15日にたびたび靖国神社を参拝するなど、極めて保守的で復古的な政治姿勢で知られている。自公連立政権では、公明党が自民党の「ブレーキ」役として機能する場面もないではなかったが、自維連立政権においては、維新はむしろ高市首相の保守的・復古的政治姿勢の「アクセル」役として機能する危険性が高い。

高市政権への閣外協力に際し、維新は自民党に対し12項目の要求を行った。この内、「大阪副首都構想」と「社会保障改革」の2つは、吉村洋文代表(大阪府知事)が当初、絶対に譲れないなどと発言していた。だが、突如として譲れない条件として「議員定数の削減」を持ち出し、首班指名での維新の協力を得たいがために、自民党はこれを受け入れることにした。

しかし本来、自民党に譲れない条件として要求すべきは企業・団体献金の廃止である。ところが、自民党と維新との合意書によれば、企業・団体献金については最終結論を得るには至らず、両党間での協議体を設置し、高市総裁の任期中(2027年秋まで)に結論を得るとされていて、事実上の棚上げとなっている。そうした実情を覆い隠すために、企業・団体献金の廃止から議員定数の削減に論点をすり替えたと言わざるを得ない。

議員定数削減は、衆議院議員の1割を削減するとしており、報道によれば、比例代表の定数削減を念頭に置いているとも伝えられている。維新は、議員定数の削減を「身を切る改革」などと称しているが、削減対象が比例代表なら、むしろ多様な民意の切り捨てである。大阪府内の衆議院小選挙区の議席を独占する維新(特に大阪維新の会)にとっては、自分たちの「身を切る」ことなく多様な民意を切り捨てるご都合主義である。

また、自民党と維新との合意書によれば、9条改憲や緊急事態条項に関する両党の「条文起草協議会」の設置、衆参両院の憲法審査会への「条文起草委員会」の常設、日章旗(日の丸)を損壊する行為を処罰できる「日本国国章損壊罪」(国旗損壊罪)の制定、インテリジェンス・スパイ防止関連法制の速やかな成立などが盛り込まれている。いずれも日本国憲法の三大原則である平和主義、基本的人権の保障、民主主義を大きく歪めるものであって、断じて容認できない。この内、国旗損壊罪の制定は、表現の自由を保障する憲法21条に違反する明らかな違憲立法であり、民主主義国家においてはあってはならないものである。

さらに、両党の合意書では、国家安全保障戦略などの「安保3文書」の前倒し改定が盛り込まれており、報道によれば、防衛費を関連経費と合わせて国内総生産(GDP)比2%とする目標のさらなる増額が念頭にあると伝えられている。アメリカのトランプ政権は水面下で、日本に対し防衛費のGDP比3.5%への増額を求めているとも報じられているが、防衛費の増額は社会保障関係費などを圧迫し、防衛増税によって国民生活へのしわ寄せが生じかねないのは明らかである。

この他、両党の合意書は、「戸籍制度及び同一戸籍・同一氏の原則を維持しながら、社会生活のあらゆる場面で旧姓使用に法的効力を与える制度を創設する」としていて、選択的夫婦別姓の法制度化を否定している。高市首相は、日本の憲政史上初の女性総理となったものの、これまでジェンダーの平等や女性の権利向上に積極的に取り組んできたとは言い難く、こうした姿勢は極めて許しがたい。

高市内閣の発足は、戦後日本の平和主義、民主主義、立憲主義を大きく変質させる危険を有しており、日本の政治は危機的な状況にある。高市内閣の暴走を阻止すべく、自維連立政権に反対する野党各党と力を合わせ、高市内閣に対峙していかねばならない。社民党は、憲法改悪を企図し、さらなる軍拡と行おうとしている高市首相の姿勢に強く抗議し、政治改革の本丸である企業・団体献金の廃止に力を尽くすとともに、排外主義を克服して多様性が尊重される政治と社会の実現に向け、全力で取り組んでいく所存である。

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