経済安保版秘密保護法と地方自治法改正について~ 社会民主党 服部幹事長談話より ~

経済安保版秘密保護法について
経済安保版秘密保護法である「重要経済安保情報保護活用法案」は、経済安保の名の下に私たちのプライバシーを政府が調査できるようにする身辺調査法案であり、民間企業の従業員や大学などの研究者、その家族など数十万人が対象で、国民の知る権利を阻害し、基本的人権を侵害するもの。戦争できる国つくりのための国家統制強化でもあります。最大の問題点は「経済安保」の概念が不明確、何が秘密となるかがわからない、秘密とされた情報を取り扱う者のみならずその家族・同居人らの国籍なども政府が調査し調査情報を保持できるようになることです。①経済安保上の機密情報を「重要経済安保情報」と政府が秘密指定、②政府の長は「重要経済安保情報」を取り扱う者の身辺を調査(適性評価)可能、③「重要経済安保情報」を漏洩した者を5年以下の拘禁刑などを科す等、政府は自由に解釈して秘密指定ができ、かつ法改正や運用などによって重要経済安保情報が恣意的に拡大される恐れがあります。
「重要経済安保情報」を取り扱う者の身辺を調査できるセキュリティークリアランス(適性評価)制度の創設について、取り扱う者の国籍、家族情報、犯罪歴、飲酒歴、精神疾患などを調査可能、家族の氏名や国籍までも調べられます。調査には本人の同意が必要だとしていますが、同意しなかった場合には配置転換など不利益な扱いを受ける可能性が高く、同意は有名無実です。また、労働法制、労働者保護にも影響し、調査した情報は内閣総理大臣が設置する情報機関に蓄積され、これら個人情報が適切に管理されるかの保障もありません。
大川原化工機事件では、軍事転用可能な噴霧乾燥機を中国や韓国に輸出したと外為法違反に問われたが、事件を担当した警視庁警部補が「事件は捏造」と証言するなど判決でも違法捜査と断定された。「秘密」の名のもとに事実が隠蔽されたり、恣意的な捜査や弾圧がまかり通るようなことになっては民主主義や人権は成り立つものではありません。
本法案は政府による恣意的運用を可能としプライバシー侵害が著しい悪法であり、修正案では重要経済安保情報の指定・解除、適正評価の実施、適合事業者の認定状況について国会への報告と公表を義務付けとされ、付帯決議では「対象者のプライバシー権が侵害されることのないよう十分に留意」とされましたが、どこまで担保できるのか甚だ疑問です。当法案が出された背景にはF35戦闘機など兵器の国際共同開発に日本が参画し厳しい情報管理を求められることがあり、そもそも殺傷兵器の輸出が日本国憲法の理念に違反しているのは明らかで、戦前の歴史を紐解けば、国家総動員法(1938年制定)の秘密保護規定の蒸し返しに他ありません。
以上のことから社会民主党は、この法には断固として反対であり、衆議院「立憲民主党・無所属」会派が法案に賛成したことから、やむを得ず本会議採決を退席という行動を取りましたが、今後、引き続きこの法律の危険性を広く訴えて廃止に向けて取り組んで行きたいと考えます。


地方自治法改正について
本改正は、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」に国民の生命保護に必要な対策を国が地方自治体へ指示できる「指示権」を創設することを主としています。社民党は、国と自治体の対等関係を崩壊させ、地方自治を失わせる本改正に対して強く反対し、成立へ断固抗議します。
本改正は、昨年12月に地方制度調査会からの答申を法制化したものですが、答申では、2020年の新型コロナウイルス感染拡大時に、大型客船内で集団感染した際に、当時の個別法では想定外の事態であったため、国が必要な指示を自治体へ出せなかったことで、患者を搬送することが難航したことを教訓に、「大規模な災害、感染症のまん延などの国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」に、国が自治体へ指示を出せるように、地方自治法を改正するべきだと指摘された。答申に基づき、改正案では大規模な災害、感染症のまん延など「国民の生命等の保護のために特に必要な場合」で、かつ個別法で対応できない場合に、閣議決定を経て国は自治体へ指示することができるとされた。
本改正の問題点として、まず立法事実が存在しないこと、答申で指摘したコロナ禍での国と自治体との調整をめぐる問題については、2020年の感染症対策法改正により、都道府県知事に対する厚労大臣の指示権が創設され、また、自然災害については「災害対策基本法」により国が自治体に指示できます。そのため、松本剛明総務大臣は個別法で対応できない事態について問われた際に、「現時点で具体的に想定しうるものはない」との答弁であった。
 第二の問題点として、「地方分権一括法」で「対等・協力」関係と位置付けられている国と自治体との関係を上下主従関係へと変容させることです。第三の問題点は、国の指示が正しいとは限らず、恣意的な指示の恐れがあることです。2020年3月に新型コロナウイルス感染拡大に伴い、当時の安倍晋三首相が全国の自治体に一斉休校を要請しました。感染状況は各地によって全く異なる状況であったにもかかわらず、国からの一律的な要請は各自治体で混乱に陥りました。本改正では、指示を出す前に自治体へ意見の提出を求める規程がありますが、努力義務に過ぎません。閣議決定のみで指示でき、国会の関与は修正案で追加された事後報告だけとなります。
以上のように、地方自治を奪い去る本改正に対して社民党は断固反対です。本国会は、経済安保版秘密保護法が成立、有事下の農業法制も成立しました。本改正も有事を想定した法整備であるのは明らかで、衆議院総務委員会にて松本総務大臣は武力攻撃事態等へ本改正案に基づく関与を行使することは「考えていない」と答弁しているが、信用できません。沖縄辺野古の国の代執行強行をみれば明らかです。戦前内務省が地方の首長の人事を握り国=省の命令で自治体を従わせてきた中央集権体制の復活を許してはなりません。
 社会民主党は、本改正の運用を厳しく監視し「指示権」の廃止に向け尽力して行きたいと考えます。

                    2024年7月4日
                    社会民主党滋賀県連合

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