社民党は、東日本大震災における福島第一原発の事故から学び、電力政策を根本から見直し、野党共同で「原発ゼロ法案」を提案しています。
原発がひとたび重大事故を発生した時、幾多の人々が故郷や職場を失い、経済を破壊し、甚大な被害や不安、恐怖を与えている隠しようのない事実。また、原発は事故が発生しなくても、放射性廃棄物の最終処理方法も決まっていないし、溜まり続ける。将来の世代に放射能の危険性と管理(10万年以上)を押し付けることは、断じて許されません。
原発のない社会へびわこ集会は、これまで毎年1000人規模で開催されてきました。
今回は新型コロナウィルスの感染を防ぐために集会のみで、500人規模となりました。私たちは一人でも多くの皆さんに集会の雰囲気を伝えたいと、分割報告にすることにしました。
井戸弁護士の基調報告
今集会の基調報告を井戸謙一弁護士 (元金沢地裁裁判長) がされました。
井戸弁護士は現在、福井原発差しどめ訴訟(滋賀)の弁護団長として活躍中。福島の子どもたちを救うため「子ども脱被ばく裁判」などに関わっておられ、過去・現在・そして未来に向けた高い見識を持った立場からの基調報告です。
1 はじめに
福島事故から9年。日本ではオリンピックで、原発事故は終わったように扱われて、意図的に原発事故被害が隠されている。
ウクライナでは、チェルノブイリ事故から34年経過した今でも、国をあげて防護対策に取り組んでいる。これが世界の常識、と紹介。
2 福島の現状
(1)廃炉作業は被ばく労働を前提
溶けた核燃料を取り出す作業は進んでいない。作業中に大地震が起これば大変。
できないことはできないと認め、石棺にすることを提案。
(2)溜まり続ける汚染水の処理問題
放射能汚染水が「処理水」と名前を変えた。トリチウムは、無害というのは大嘘。
無害化に莫大な費用がかかるので、原子力事業者は、基準値以下では害がないことにして、環境に放出してきた。(泊・玄海原発周辺で白血病やがんの羅患者数が、周辺地域と比較して顕著に増えている)
六カ所村再処理工場が稼働すれば、原発よりはるか大量のトリチウムが環境に排出される。(六カ所再処理工場:1京8000兆ベクレル、福島第一原発タンク:1000兆ベクレル) 福島で汚染水の放出を阻止すれば、六カ所村再処理工場は稼働できないことになる。
(3)汚染土壌の処理(1億総被ばく対策)
被ばくがれき(稲わら)の焼却、汚染土壌(フレコンバッグに入ったもの)の農地へのすき込みが始まっている。
原発敷地内では、法に則り、1Kgあたり100ベクレルを超える資材は「低レベル放射性物質」として厳重な管理が求められている。
一方、敷地外では、1Kgあたり100ベクレルを超えていても、8000ベクレルまでの汚染土壌は、再使用できる「資材」として位置付けを変えられ、全国の公共工事にばら撒こうとしている。
(4) 被ばくは少量であっても、被ばく量に応じた健康被害がある
国際放射線防護委員会(ICRP)ですら認めている。
住民を被ばくから守る対策は、放射性物質を隔離することが大原則。
しかし国は、汚染水は海に流し、汚染土壌は、再利用できる「資源」として位置付け、全国にばらまく政策を取っている。全国の市民が知らず知らずのうちに薄く被ばくし、健康被害が出る。その理由付けとして、福島で健康被害が出ていないとされている。
3 健康被害は本当にないのか
(1) 福島県民調査では、236人の小児甲状腺がん患者が出ている。
福島原発事故前は、100万人に1〜2人、福島県では2〜3年に1人と言われていた病気。しかも236人は福島の子どもから小児甲状腺がんを発症した総数でないことが判っている。国も福島県も総数を発表しない。 そして、被ばくとは関係ないと断定し、検査自体を縮小しようとしている。
検査を続けることによって、発生数の異常性が明白になることを恐れている。
(2) 健康被害は統計を取らなければ顕在化しない。
政府は統計を取らない。それでも断片的に健康被害が明らかになっている。
ア 周産期死亡率
福島原発事故後、東北、北関東では周産期死亡率が15%上昇したことが明らかになっている。
イ 奇形
福島原発事故後、乳児に対する複雑心奇形の手術件数が、全国で約15%増加したこと、小児先天奇形の一種である停留精巣の手術件数が約13%上昇したことが明らかになっている。
ウ 岡山市の三田茂医師は、関東地方の人たちに白血球の異常が多く、能力減退症ともいうべき症状が拡がっている と警告している。
エ 神戸市の郷地秀夫医師は、東日本からの避難者や、保養に訪れる人に、橋本病の原因となる甲状腺自己抗体の保有者が多く、がん抑制遺伝子であるP53抗体が少ない人が多い という研究結果を公表している。
次回は被災者切り捨て政策や被ばく政策などについて掲載予定です。